27 December 2016

The best pasta in town | バラ・マーケット脇のパスタ・バー


少し前にバラ・マーケットに行った帰り、長い行列ができている新しいレストランを見つけました。
なんだなんだとググッてみると、手打ちパスタをお値打ちにいただけるパスタ・バー、だそうで。
日を改めてツレアイとランチに行ってみました。

予約を取らないお店ということで、開店時間の12時に合わせて15分前に行ってみると、早くも20名ほどの方が並んでおりました。
開店と同時に入店の案内が始まったのですが、一度に注文をさばける人数だけ入れる方針らしく、無情にも我々の目の前で扉が閉じられ。。。空いている椅子が沢山あるのを眺めつつ、寒さに震えながら待つこと10数分、やっと招き入れられたのでした。

レストランの1階部分はバーになっていてカウンター席なのですが、地下にはテーブル席あり。
テーブル席に陣取った我々がオーダーしたのは、「キャラメライズした紫玉ねぎとブルーチーズのストラッチ(ペロンとした菱形のパスタ)」(ツレアイ)と「蟹、チリ、レモンのタリエリーニ」 (ワタクシ)。
オープンキッチンでは、スタッフがパスタを打っているのが見えます。

まずはパスタの完璧なアルデンテっぷりに感動!ロンドンでは、半分溶けているようなパスタに出会うことも珍しくないのです。。。
ストラッチはこってり濃厚、赤ワインが進みそうなお味。そして、ワタクシのタリエリーニが、もう!これまでロンドンで食べたパスタの中で一番美味しかった!オイルペースのソースかと思っていたらバターが使われていて、これが蟹、チリ、レモン、そしてニンニクの風味をうまいことまとめ上げておりました。一緒に頼んだプロセッコが進むこと!このパスタ、11ポンドだったのですが(今、お店のサイトで確認したら12ポンドに値上がりしておりました)、ロンドン中心部の他のレストランだったら間違いなく18ポンドくらいしそうです。
 
デザートに「塩キャラメルのアイス」をシェア。手作りと思われるアイスは、焦がし気味のキャラメルが効いていて美味しかった~(塩キャラメル感はあんまりなかったけど)。

サービスはテキパキしていて適度にフレンドリー。なにより、目配りが効いているのに好感を持ちました。

これは、また時間のある時に並んで、他のパスタも試さねば。次は前菜も試してみたいわ~。

Padella
http://padella.co/
6 Southwark Street, London SE1 1TQ
★★★★☆

25 December 2016

No Man's Land | 誰もいない国

Writer: Harold Pinter
Stars: Ian McKellen, Patrick Atewart, Owen Teale, Damien Molony
 Director: Sean Mathias
★★★★★

日本で暮らしていた頃大好きだったテレビ番組に『スジナシ』というのがありまして。
笑福亭鶴瓶とゲストの俳優が即興でお芝居をする、という番組なのですが、あるのはセットだけ。台本も打ち合わせもなく、ぶっつけ本番で演じなければならないのです。
お互い相手の出方を伺いつつ何とか辻褄を合わせようとするうちに、話がどんどんシュールな方向に行ってしまって。。。というのが楽しくて、毎週欠かさず観ていたのでした。

先日、ピンター作の『誰もいない国』を観に行って、この『スジナシ』のことを思い出したんですねー。
舞台はハムステッドのとある屋敷の一室。そこで、イアン・マッケラン演じるスプーナーとパトリック・スチュワート演じるハーストの会話が始まるのですが、 観客には二人の関係がまったく見えない。二人は知り合い?それとも??会話の内容もあっちへ飛びこっちへ飛びで、あたかも限られた条件の中で即興芝居をしているような。そこへフォスターとブリッグスという、これまた「あなた達、誰?」なキャラクターがやって来て、話が余計ややこしくなって行きます。

第一幕はスプーナーとハーストの腹の探り合い、という感じで、第二幕は「どちらが相手により精神的ダメージを与えることができるか」というマウント合戦の様相を呈しておりました。学生時代の憧れの女性と実は僕、付き合ってたんだよね~、とか言ったりして。

友人は「ハーストが認知症を患っていて、スプーナーがそれに合わせてるんじゃないか」と言っておりました。その解釈ありかも、と思ったのですが、スプーナーの胡散臭さ(スーツに汚れたテニスシューズ合わせてたり、人がいなくなると部屋中嗅ぎまわったり)を考えると、そういうハートウォーミング路線はなしかな、とも思ったり。

場面転換なしで、登場人物がひたすら喋りまくるこのお芝居、おそらくワタクシが理解できたのは6割ほど。時に、周りの人は笑ってるのに自分は置いてけぼり状態に陥りつつも、最後まで集中力が切れることはありませんでした。名優2人の競演を見られて大満足♪

4 December 2016

Giselle/English National Ballet | ジゼル/イングリッシュ・ナショナル・バレエ

Direction & Choreography: Akram Khan
Visual and Costume Design: Tim Yip
Music, after the original score by Adolphe Adam: Vincenzo Lamagna
Lighting Design: Mark Henderson
Dancers: Madison Keesler, Aitor Arrieta, Ken Saruhashi, Isabelle Brouwers
★★★☆☆

少し前の話ですが。
アクラム・カーン振付の『ジゼル』を観に行ってきました。
クラシック・バレエはほとんど観ない、ワタクシ。事前に粗筋をチェックして、YouTube でボリショイ・バレエの『ジゼル』を観て予習。
それにしても『ジゼル』ってロマンチックな感じだけど、これまでのカーン氏の作風と合わないような、と思っていたら、ストーリーが大幅に変更されておりました。

ジゼルは、縫製工場で働く移民労働者、になっておりまして。工場の閉鎖によって、職を失った労働者たちは巨大な壁によって閉じ込められてしまいます。ジゼルに恋するヒラリオンは、彼女の恋人アルブレヒトが実は工場の経営側の令嬢と婚約していることを暴露。ジゼルは狂死します。ここまでが第一幕で第二幕では、亡くなった工場労働者の亡霊(ウィリ)たちがミルタに率いられて、ヒラリオンやアルブレヒトに復讐を果たそうとします。。。この物語の背景には、バングラデッシュで頻発する縫製工場の倒壊や火災があるのでしょうね。

という訳で、すっかり土臭くなったジゼル、カーン氏の振付がピタリとはまっておりました。特に労働者やウィリの群舞は、鬱屈したパワーのようなものが感じられて鳥肌が立ちました。
音楽も、オリジナルの音楽を基にしているそうですが、打楽器を多用したカタックのような音楽になっていて、個人的には、むしろこっち音楽の方が好き。

舞台中央の巨大な壁が、さまざまな分断を象徴していて効果的でしたねぇ。
あと、衣装も良かった。労働者たちのミニマルな衣装とブルジョア階級の人々のやり過ぎ感満載の華美な衣装の対比が際立っていて。

ただ、これはワタクシがクラシック・バレエを見慣れていないからだと思うのですが、ところどころで展開が遅いように感じられたんですよね~。とは言え、機会があればもう1回観てみたい!

3 December 2016

Super yummy Thai food followed by a piece of Japanese cake | 絶品タイ料理と日本のケーキ

先日、張り切って観に行った日本映画にがっかりした友人とワタクシ。
でも、その前に友人にとっても美味しいレストランに連れて行ってもらっていたので、心穏やかに家路につくことができたのです。
  

それがこちらの KILN (陶磁器などを焼く「窯」の意)。バーベキューがメインのタイ料理屋さんです。料理は、ミャンマーや中国雲南省の影響を受けた北部の料理が中心で、あと、バンコクのチャイナタウンで見られる料理がチラホラ、だそう。

小ぢんまりとした店内はオープン・キッチンをカウンターが囲む形になっています。この部分はウォークインのみ。地下にダイニング・ルームがあって、4名以上のグループの予約を取っているそう。


そして、我々が通されたのがこちらの特等席!まだ新しいお店なのに、すっかり使い込まれた感のある調理場ときびきび働くシェフのみなさんを眺めながらの食事でした。

タイ料理屋に行っておいてなんですが、ワタクシ、唐辛子の辛味が苦手でして。ウェイターさんに何度も「あんまり辛くしないで」と念押しして、「君たちの注文した料理に辛いのないから大丈夫」と苦笑されたのでした。


さて、今回注文したのは「土鍋で調理した春雨 豚バラと蟹ミソ(写真上)」、「熟成羊肉の串焼き クミン風味(写真下)、「アカザエビ、コブミカンの葉、ミントのサラダ」、「青菜炒め」の4品にライス。
どれも美味しかったのですが、特に 「土鍋で調理した春雨 豚バラと蟹ミソ(写真上)」と「アカザエビ、コブミカンの葉、ミントのサラダ」が出色、でありました。
「土鍋で調理した春雨 豚バラと蟹ミソ(写真上)」は見た目地味なのですが、よーくかき混ぜると底から豚バラと白菜(だったか?)がごっそりと出てきます。甘辛い味付けに蟹ミソが絡んでかなり濃厚なのですが、添えられている甘じょっば酸っぱ辛いタレをかけると、アーラ不思議、さっぱりと頂けます。
「アカザエビ、コブミカンの葉、ミントのサラダ」は、エビが生だったのですが、甘みがあって美味!ペルー料理のセビーチェのような一皿。
ポーションは日本人女子には丁度良い感じでしたが、こちらの人には少なくて、割高感があるかも。

難点は、座席がやたら高いスツールで足が宙ぶらりんになること。ゆっくり食事を楽しむ、という感じではなく、これは、回転率を上げたい店側の作戦か?(笑)

次は4名以上で行って、もっとあれこれ試してみたい!

KILN
http://www.kilnsoho.com/
58 Brewer Street London W1F 9TL
★★★★☆


上機嫌で食事を終えたワタクシ達、デザートをいただくべく、最近できた日本風のケーキが食べられるお店へ。


ソーホーの路地にある小ぢんまりとした、こちらのお店。
ケーキと一緒に日本茶を楽しむことができます。
ミルクレープが一押しのようですが、他にも繊細なケーキたちがショーケースに並んでおりました。


こちらで頂いたのは、友人が「バニラクリームのミルクレープ」、わたしが「抹茶のティラミス」。ケーキのお供は2人とも蕎麦茶で。
「抹茶のティラミス」は、ティラミス感はあまりなかったのですが、ふわふわの抹茶スポンジと軽やかなクリームが美味!うぅっ、ロンドンでこんなケーキが食べられるようになったなんて(しかも蕎麦茶と一緒に!)、嬉しすぎる。

この日、お店にいたスタッフは、みなさん台湾の方とお見受けしました。とってもフレンドリーで、居心地よかったです。なんと、日本でよく見る、お客さんのカバンなどを入れるバスケットもありましたよ。


お店の住所をそのまま日本語にした刺繍がエプロンに。
英国の若者に人気の服飾ブランド「Superdry. 極度乾燥(しなさい)」 を彷彿とさせますな。

ケーキが結構なお値段なのですが、お店の立地を考えると致し方ないかも。
是非とも末永く頑張っていただきたいです!

Kova Japanese Patissery
http://www.kovapatisserie.com
9 - 12 St Anne's Court London W1F 0BB
★★★★☆

1 December 2016

Creepy | クリーピー 偽りの隣人

Director: KUROSAWA Kiyoshi
Writer: KUROSAWA Kiyoshi, MAEKAWA Yutaka (based on the novel by)
Stars: NISHIJIMA Hidetoshi, TAKEUCHI Yuko, KAWAGUCHI Haruna, HIGASHIDE Masahiro, KAGAWA Teruyuki
2016/Japan
★★☆☆☆

この映画、ロンドン映画祭に来ていたのですが、チケット代が驚愕の16ポンド(約2240円)で、観に行くのを断念したのです。が、このたび英国で一般公開されまして、映画祭で涙をのんだ友人と一緒に張り切って観に行ってきました。ちなみに、チケットが安くなる平日に行ったので、チケット代は6ポンドでございました。

もうねー、この映画、「ザ・香川照之ショー」でありましたよ。文字通りクリーピーな男を嬉々として演じる香川照之の独壇場。なんだけど、逆に、それだけ、という印象だったんですよね~。
以下、かなり内容に触れてますので、これからご覧になる方はそっとウィンドウを閉じてくださいませ。。。
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さて。原作を読んでいないので、元々どういう話なのか分からないのですが。。。元刑事で犯罪心理学者の高倉(西島英俊)は、元同僚の刑事から6年前に起きた未解決の一家失踪事件の分析を頼まれます。
高倉は妻の康子(竹内結子)と一緒に最近引っ越したばかり。隣人の西野(香川照之)は、その言動がなにやら怪しげで。。。

と、出だしは面白かったのですが、なんだか辻褄の合わない部分がポロポロ出てきて。結局、西野は適当な家を見つけると、そこに居座って怪しげな薬(覚せい剤?)で家族をコントロールしつつ、その家の主のふりをして暮らすサイコパスだったのですが、見るからに怪しい西野に康子がやたら接近したりとか。6年前の失踪事件にも西野が関わっていたのでは、となるのですが、その辺りが曖昧なままだったりとか。危険な西野宅に刑事が1人ずつ、応援を呼ばずに入って行って殺されたりとか。なにより、結局、西野は誰なの、というのも謎のままで。

なんというか、もう少し夫婦の心の機微とか、事件の背景にある心理なんかが描かれてると良かったのにな。 あるいは、お化け屋敷的な「怖い~!」っていうのを楽しむための映画だったのかしらん?

黒沢清監督、心理的にグイグイ来る『CURE』や『トウキョウソナタ』は面白かったんだけどなぁ。

30 November 2016

Your Name. | 君の名は。

Director: SHINKAI Makoto
Writer: SHINKAI Makoto
Stars: KAMIKI Ryunosuke, KAMISHIRAISHI Mone, NAGASAWA Masami, ICHIHARA Etsuko
2016/Japan
★★★☆☆

普段アニメはまったくと言っていいほど観ない、ワタクシ。なので、ロンドン映画祭に来たこの映画もノーマークでした。が、このたび英国で一般公開されたことと、我が故郷にほど近い飛騨市が舞台になっているというのを聞いて観に行くことに。

いやー、思ってたより、ずーっと楽しめました!
いつもの如く、以下、かなり内容に触れていますので、これから観に行く、という方はそっとウィンドウを閉じてくださいませ。。。
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さて。何の前知識もなかったので、最初の方は、よくある男女の入れ替わりコメディなのねぇ、なんて思いながら観ていたら。主人公2人の時間軸が違う、ということが分かってからのグイグイとストーリーを進める勢いがすごかった!(RADWIMPS の楽曲がすごく合ってた!)

キャラクターの絵柄はあまり好みではないのだけど、背景が素晴らしかったですねー。雨に濡れた歩道とか、紅葉の山道とか。かつて毎日通勤に使っていた名古屋駅が一瞬出てきたのですが、めちゃくちゃリアルでした!

ただ難を言うと、エンディングは無理やりハッピーエンドにもっていったような、そして若干引っ張りすぎな印象を受けました。あの村がどうなったのか、とか全部説明しちゃうより、曖昧にしておいたほうが鑑賞後に友人とあーだこーだ言い合えて楽しいのにな、と。

それにしても日本のアニメが英国で一般公開されるなんて、感無量。この勢いで、今一番観たい『この世界の片隅に』も公開されないかしらん?

28 November 2016

Modernismo in Catalonia 3 | カタルーニャ モデルニスモを巡る旅 3


サグラダ・ファミリアを堪能したワタクシ達、次に向かったのは「サン・パウ モダニズム区域」です。
2014年から一般公開されているこちら、素敵なリゾート地かと思いきや、なんと病院(サンタ・クレウ・イ・サン・パウ病院)なのです。今回お世話になった友人 J によると、わりと最近まで現役で使用されていたのですが、サン・パウ病院の移転に伴って一部の建物が一般公開されるようになったのだとか。
設計はカタルーニャ音楽堂で有名なリュイス・ドメネク・イ・ムンタネー。


チケット売場などがある事務管理分館。見事な左右対称っぷり。
まるで五つ星ホテルの入口のよう。。。


敷地内には手術棟や病棟などとして利用されていた建物が整然と並んでいます。
かつては27棟の建物が並んでいて、それぞれ地下通路で繋がっていたのだとか。
なんだか病院というより、街、ですね~。


開院は1930年。ちょっとうろ覚えなのですが、展示されていたパネルの説明によると、無料で医療を提供していたそう(貧しい人々だけ無料、だったかも)。


事務管理分館の内部。細部にまで神経の行き届いた美しい装飾が施されておりました。
 こーんな素敵な病院だったら、優雅な入院生活が送れそう。。。

サン・パウの近くにあった目玉に覆われた建物。

23 November 2016

Autumnal walk in Waldingham | 晩秋の森


少し前の話ですが。
我が家から車で10分ほどのところにある Waldingham 村の森が「紅葉の名所」だと聞いて、2回ほど散歩に行ってきました。


紅葉、といっても、英国南東部ではほとんどの葉が黄色く色づきます。そこに、ちょっぴり赤やオレンジが混ざる感じ。



ピリリと冷たい空気の中、落ち葉を踏みしめつつ。
乗馬にやって来る人が多いらしく、馬の落とし物がそこかしこに。これ、拾ってコンポスト容器に入れたら良い堆肥ができるのでは?と思ったのですが、車ラブなツレアイに激しく却下されました(笑)



紅葉(黄葉)の森、見頃は11月上旬から中旬にかけて、かな。我が家の恒例行事にしたいと思います!

21 November 2016

Modernismo in Catalonia 2 | カタルーニャ モデルニスモを巡る旅 2


モデルニスモを巡る旅、次に訪れたのは総本山サグラダ・ファミリアです!
ここは20年ほど前に友人6名(!)とやって来た思い出の場所。工事の進捗状況を探るべく、チケットを予約して臨みました。


絶賛工事中のサグラダ・ファミリアですが、2026年にとうとう完成するのだとか。
近くで英語で説明していたガイドさんによると、今現在、7割ほど出来上がっているそうで。建築開始の1882年から今までに7割で、これからの10年で3割とは計算が合わないような気もしますが(笑)。


とは言え、20年前と比べると、大分工事は進んでいるようです。このパイナップルのような塔も前回はなかったような。

外壁にカタツムリが。
 


ブロンズ製(と思われる)入口の扉と扉脇の装飾。 
これも前回なかった!

自然の営みが活き活きと表現された彫刻。
ここは人気の撮影スポットになっていて、お互い譲り合いながら激写(笑)

そして、中へ入ると。。。


ここは、どこ?森??という空間が広がっておりました。
前回訪問したとき、内部は完全に工事現場だったと記憶しているのですが、あらかた完成しているようです!

ステンドグラスの反射が美しい。。。




併設の博物館も、ガウディの設計手法や使用されている自然モチーフなどがみっちり紹介されていて見応えあり。

教会内のオフィスで働く人々。

という訳で、2026年に完成の暁には是非とも再訪したいです!

20 November 2016

I, Daniel Blake | わたしは、ダニエル・ブレイク

Director: Ken Loach
Writer: Paul Laverty
Stars: Dave Johns, Hayley Squires
2016/UK=France=Belgium
★★★★★

ケン・ローチ監督の最後の作品、と言われている『わたしは、ダニエル・ブレイク』を観に行ってきました。
今年のカンヌ映画祭でパルムドールを受賞したこの映画、主人公ダニエルが不条理なまでに複雑な福祉システムに翻弄される姿が描かれています。先日のクエスチョン・タイムで、労働党のコービン党首がメイ首相に「ご覧になってはいかがですか?」と勧めておりました。

以下、映画の内容にかなり触れております。これから観に行く、という方はそっとウィンドウを閉じてくださいませ。。。
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さて。ニューキャッスルで腕のいい大工として働いていたダニエルは、心臓発作を起こして医者から仕事に復帰することを止められます。
映画冒頭、傷病手当を受給したいダニエルと審査担当の女性の電話での会話が流れてきます。この担当者がね~、もう "ザ・お役所" で(実際は行政から依頼された企業、らしいのですが)。マニュアルどおりというか、融通が利かないというか。そんな彼女に戸惑いながらも、ユーモアで応戦するダニエル。この時点で映画館中の人が彼に声援を送っていたハズ。

傷病手当の申請が何故か「働くことができる状態にある」という理由で却下されたダニエルは、ならば、と失業手当を申請しようとします。
これがまた茨の道で、電話をかけても延々と待たされ、慇懃無礼な担当者は型通りの質問をするばかりでこちらの質問には答えてくれず、申請はオンラインでしか受け付けてもらえず。。。文字通り右往左往する(させられる)ダニエルを演じたデイブ・ジョンズは、コメディアンだそうで、追い詰められながらも、どことなくとぼけた味わいのあるダニエルを好演しておりました。あと、この人がうちのご近所さんにソックリで。そういう意味でも、一層感情移入してしまったのでした。

さて、そんなダニエルは、ひょんなことから2人の子供と一緒にロンドンから越してきたシングル・マザーのケイティと知り合います。2人は助け合いながら交流を深めてゆくのですが、映画ではこのケイティをとおして、これでもか、これでもかと「貧困」というものを見せつけてくるのです。

この映画がスゴイのは、重たいテーマを扱いながらもエンターテイメントとして成立していること。そのおかげで、作品のメッセージがすんなりと入ってきたように思います。

ところで、6月の国民投票で Brexit が決まったとき、「信じられない!」と驚きを隠せないわたしに、友人の1人(残留派)が「それは、あなたがエリート(特権階級)だからだよ」と言ったのですね。そのときは、よく意味がわからなかったのだけど、この映画を観て、少なくとも現行のシステムで生活に困窮していないわたしは、エリートかどうかはともかく、非常に幸運なのだな、と。
ダニエルやケイティのように、ほんの少し足を踏み外しただけで、救済されることなく生活が立ち行かなくなる、という立場だったら。 そりゃあ、「現状維持」を象徴する「EU 残留」じゃなくて、「現状を変えてくれ!」と抗議すべく「離脱」に投票するよなぁ。。。そんなことを思いながら、どんよりとした気持ちで映画館を後にしたのでした。。。

8 November 2016

Modernismo in Catalonia 1 | カタルーニャ モデルニスモを巡る旅 1

先週のこと。
冬時間が始まってグッと寒くなってきた英国を脱出、未だ太陽輝くバルセロナへと行って参りました。今回の主な目的は、ガウディをはじめとするモデルニスモ建築家たちの作品を見学すること、でありました。

やっかいになった友人宅からのバルセロナ旧市街の眺め。
なんだか中東の街のよう。

最初に訪れたのは、バルセロナ近郊のコロニア・グエル。


「コロニア・グエル」は 、ガウディのパトロンとしても知られるエウゼビ・グエルが、自身が経営する紡績工場で働く従業員のために1890年に造ったコロニー。当時第一線で活躍していた建築家による建物が並んでいます。


コロニーには、従業員の住居はもちろん、劇場、病院、学校、教会などがあって、小さな街のよう。言わば、生活に必要な施設がすべて揃った社宅、ですな。


インフォメでもらったパンフレットによると、エウゼビ・グエルは「従業員の社会的向上を追求し、それを文化への後援という形で還元」していたそう。日本が「あゝ野麦峠」だった頃に、カタルーニャには充実した福利厚生を受けながら働く人々がいたのですねぇ。


紡績工場の高い煙突。現在は紡績工場として稼働していないそうですが、何かの会社ではある様子でしたよ。
何故か壁に鼻がくっついた建物が。。。


最後に向かったのがコロニア・グエルのハイライト、ガウディ設計の教会(地下礼拝堂)。
本当は高い塔が建つハズだったらしいのですが、サグラダファミリアにかまけたガウディがプロジェクトを放棄(!)、建設が頓挫したそうで。。。

入口扉上のモザイク。
インフォメ2階のミュージアムに各モチーフの説明がありました。


中に入ると、思わず「うわぁーーー」と声が出ます。ガウディ・ワールド炸裂。

このステンドグラスの模様は十字架と「切り開いたパイナップルを下から見た図」を組み合わせたものだそう。
十字架とパイナップル。。。天才の発想は凡人のワタクシの想像を超えております。

教会の屋根からコロニア・グエルを臨む。
向こうに現代の労働者住宅が。

この日はインフォメでもらった地図とイヤホンガイドを片手に街中を歩き回ったのですが、オリエンテーリングみたいで楽しかった!
バルセロナ市内から行く場合は、往復の電車代・入場料・イヤホンガイドがセットになったお得なチケットあります。


バルセロナに戻って、モンジュイックの丘から夕暮れの街を眺めました。
噴水手前の4本の柱はカタルーニャの旗を表しているのだそう。「カタルーニャの旗」モチーフ、いたるところにありました。
週末の夜は噴水で「マジック・ファウンテン」なるショーが開催されます。別の日に見たのですが、かなり大がかりで一見の価値あり、でしたよー。

30 October 2016

BFI London Film Festival 2016 | ロンドン映画祭 2016

映画ラバーの祭典、ロンドン映画祭。今年は10月5日から16日かけて開催されました。
今年観たのは、是枝裕和監督の新作『海よりもまだ深く』と三船敏郎のドキュメンタリー『Mifune: The Last Samurai』、そしてイザベル・ユペールの大ファン、なツレアイのお供で観に行ったイザベル・ユペール主演の新作2本です。

ではでは、忘れないうちに感想をば(以下、かなりネタばれとなります)。




 After The Storm
Director: KORE-EDA Hirokazu
Writer: KORE-EDA Hirokazu
Stars: ABE Hiroshi, MAKI Yoko, KIKI Kirin, KOBAYASHI Saatomi
2016/Japan
★★★★★

ロンドン映画祭の常連、是枝監督の新作。毎年楽しみにしているのですが、実は『歩いても 歩いても』より後の作品は今一つピンと来なかったのですよ。
でもね、これは良かった!久々に是枝節炸裂してました!

築40年(だったかな?)の団地を舞台に、大人になり切れない男とその母親、別れた妻と子どもが、ある台風の夜を共に過ごして、というこの映画、 『歩いても 歩いても』の姉妹編のような感じでした。阿部寛が息子で、樹木希林がお母さんという配役が同じで、阿部寛の役名「良多」も同じ。タイトルが昭和歌謡からとられているところも同じですよね~。
父親のようになりたくない、と思いながら、気付けば父親そっくりになっている良多。これ、わかるなぁ。ワタクシも自分が言われてイヤだった親の口癖を口にして愕然としたりすること、あります。
なりたかった大人、思い描いていた生活。すべてが思いどおりになる訳ではないけれど、進んで行くしかないんだよね。と、言葉にしちゃうとありきたりなことをしみじみと思いました。

それにしても、ニコニコしながら毒のあるコメントをサラリと言っちゃう、決して敵に回したくないおばあちゃんを演じさせたら樹木希林の右に出るものはいませんな。


 Souvenir
Director: Bavo Defurne
Writers: Jacques Boon, Bavo Defurne, Yves Verbraeken
Stars: Isabelle Huppert, Johan Leysen, Kévin Azaïs
2016/Belgium = Luxembourg = France
★★★☆☆

とってもチャーミングなラブコメディ。

パテ製造工場で働くリリアン。単調な毎日を過ごしている彼女ですが、実はかつてユーロビジョンで ABBA と競り合った歌手だったのです。
そんなリリアンが、「父親が彼女のファンだった」という青年と出会って、恋に落ち、 かつての野心を思い出します。

歌うシーンは、本人が歌っているそうで、垢抜けない振り付けも彼女がやるとなんか素敵に見えちゃう、という。

この映画の最大の収穫は、シリアスな役どころの多いイザベル・ユペールのコメディエンヌとしての側面を発見できたこと、ですね~。あ、あと、かつてのアイドルを前にして舞い上がっちゃう青年の父親もツボでした。


 Elle
Director: Paul Verhoeven
Writers: Philippe Djian (based on the novel by), David Birke
Stars: Isabelle Huppert, Laurent Lafitte, Anne Consigny, Charles Berling
2016/France = Germany = Belgium
★★★☆☆

イザベル・ユペール主演の新作2本目。
原作が大好きな恋愛映画『ベティ・ブルー/愛と激情の日々』の原作者フィリップ・ジャンの小説で、監督が『ロボコップ』や『氷の微笑』のポール・バーホーベンということで、興味津々だったのですが。うーーーーん、何と言うか、どう判断してよいのか悩ましい映画でありました。

映画は、ゲーム会社で成功しているミシェルが何者かに強姦されるシーンで幕を開けます。実はミシェルには父親が殺人を犯したという過去があり、その経験から彼女は警察をまったく信用していなくて、自分で犯人を探し出そうとするのですが。。。

というスリラーなのですが、コメディでもあって、笑った後に軽く罪悪感にかられるという妙な感じ。そして、セクシャルなシーンにアダルト・ビデオ的な「男のファンタジー」を見てしまって、居心地悪かったり。

イザベル・ユペールの衣装がめっちゃスタイリッシュで、どこの洋服だろう?なんてことも気になりました。


 Mifune: The Last Samurai
Director: Steven Okazaki
2015/Japan
★★★★★

今年の映画祭の締めくくりは三船敏郎の生涯を追ったドキュメンタリーでした。
日本のチャンバラ映画の歴史を紐解きつつ、三船敏郎の生涯、そして黒澤明監督との関係を、当時の関係者のインタビューを入れつつ紹介しています。

もうねー、改めて三船敏郎のカッコよさに痺れましたね~。
今の映画って、こういうギラギラした色気のある役柄ってないですもんねー。

この映画の中で、三船敏郎が若い兵隊の教育係をしていたという大戦中のエピソードが出てきたのですが、若い兵隊、というのは特攻隊員で。今から出撃する、という特攻隊員の写真が出てきたのですが、もうねー、それが、まだ声変わりもしてなさそうな坊主頭の男の子で。なんだか、この写真が頭に焼き付いちゃって、やるせないです。

マーティン・スコセッシ監督が三船/黒澤の魅力を語っていたのですが、この人、相当な映画オタクですね~。