30 October 2016

BFI London Film Festival 2016 | ロンドン映画祭 2016

映画ラバーの祭典、ロンドン映画祭。今年は10月5日から16日かけて開催されました。
今年観たのは、是枝裕和監督の新作『海よりもまだ深く』と三船敏郎のドキュメンタリー『Mifune: The Last Samurai』、そしてイザベル・ユペールの大ファン、なツレアイのお供で観に行ったイザベル・ユペール主演の新作2本です。

ではでは、忘れないうちに感想をば(以下、かなりネタばれとなります)。




 After The Storm
Director: KORE-EDA Hirokazu
Writer: KORE-EDA Hirokazu
Stars: ABE Hiroshi, MAKI Yoko, KIKI Kirin, KOBAYASHI Saatomi
2016/Japan
★★★★★

ロンドン映画祭の常連、是枝監督の新作。毎年楽しみにしているのですが、実は『歩いても 歩いても』より後の作品は今一つピンと来なかったのですよ。
でもね、これは良かった!久々に是枝節炸裂してました!

築40年(だったかな?)の団地を舞台に、大人になり切れない男とその母親、別れた妻と子どもが、ある台風の夜を共に過ごして、というこの映画、 『歩いても 歩いても』の姉妹編のような感じでした。阿部寛が息子で、樹木希林がお母さんという配役が同じで、阿部寛の役名「良多」も同じ。タイトルが昭和歌謡からとられているところも同じですよね~。
父親のようになりたくない、と思いながら、気付けば父親そっくりになっている良多。これ、わかるなぁ。ワタクシも自分が言われてイヤだった親の口癖を口にして愕然としたりすること、あります。
なりたかった大人、思い描いていた生活。すべてが思いどおりになる訳ではないけれど、進んで行くしかないんだよね。と、言葉にしちゃうとありきたりなことをしみじみと思いました。

それにしても、ニコニコしながら毒のあるコメントをサラリと言っちゃう、決して敵に回したくないおばあちゃんを演じさせたら樹木希林の右に出るものはいませんな。


 Souvenir
Director: Bavo Defurne
Writers: Jacques Boon, Bavo Defurne, Yves Verbraeken
Stars: Isabelle Huppert, Johan Leysen, Kévin Azaïs
2016/Belgium = Luxembourg = France
★★★☆☆

とってもチャーミングなラブコメディ。

パテ製造工場で働くリリアン。単調な毎日を過ごしている彼女ですが、実はかつてユーロビジョンで ABBA と競り合った歌手だったのです。
そんなリリアンが、「父親が彼女のファンだった」という青年と出会って、恋に落ち、 かつての野心を思い出します。

歌うシーンは、本人が歌っているそうで、垢抜けない振り付けも彼女がやるとなんか素敵に見えちゃう、という。

この映画の最大の収穫は、シリアスな役どころの多いイザベル・ユペールのコメディエンヌとしての側面を発見できたこと、ですね~。あ、あと、かつてのアイドルを前にして舞い上がっちゃう青年の父親もツボでした。


 Elle
Director: Paul Verhoeven
Writers: Philippe Djian (based on the novel by), David Birke
Stars: Isabelle Huppert, Laurent Lafitte, Anne Consigny, Charles Berling
2016/France = Germany = Belgium
★★★☆☆

イザベル・ユペール主演の新作2本目。
原作が大好きな恋愛映画『ベティ・ブルー/愛と激情の日々』の原作者フィリップ・ジャンの小説で、監督が『ロボコップ』や『氷の微笑』のポール・バーホーベンということで、興味津々だったのですが。うーーーーん、何と言うか、どう判断してよいのか悩ましい映画でありました。

映画は、ゲーム会社で成功しているミシェルが何者かに強姦されるシーンで幕を開けます。実はミシェルには父親が殺人を犯したという過去があり、その経験から彼女は警察をまったく信用していなくて、自分で犯人を探し出そうとするのですが。。。

というスリラーなのですが、コメディでもあって、笑った後に軽く罪悪感にかられるという妙な感じ。そして、セクシャルなシーンにアダルト・ビデオ的な「男のファンタジー」を見てしまって、居心地悪かったり。

イザベル・ユペールの衣装がめっちゃスタイリッシュで、どこの洋服だろう?なんてことも気になりました。


 Mifune: The Last Samurai
Director: Steven Okazaki
2015/Japan
★★★★★

今年の映画祭の締めくくりは三船敏郎の生涯を追ったドキュメンタリーでした。
日本のチャンバラ映画の歴史を紐解きつつ、三船敏郎の生涯、そして黒澤明監督との関係を、当時の関係者のインタビューを入れつつ紹介しています。

もうねー、改めて三船敏郎のカッコよさに痺れましたね~。
今の映画って、こういうギラギラした色気のある役柄ってないですもんねー。

この映画の中で、三船敏郎が若い兵隊の教育係をしていたという大戦中のエピソードが出てきたのですが、若い兵隊、というのは特攻隊員で。今から出撃する、という特攻隊員の写真が出てきたのですが、もうねー、それが、まだ声変わりもしてなさそうな坊主頭の男の子で。なんだか、この写真が頭に焼き付いちゃって、やるせないです。

マーティン・スコセッシ監督が三船/黒澤の魅力を語っていたのですが、この人、相当な映画オタクですね~。

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