29 June 2017

I Was Born, But... | 大人の見る繪本 生れてはみたけれど

Director: OZU Yasujiro
Writers: James Maki, FUSHIMI Akira
Stars: SAITO Tatsuo, YOSHIKAWA Mitsuko, SUGAWARA Hideo, AOKI Tomio
1932/Japan
★★★★★

先日、バービカン・センターの映画館にて小津安二郎監督の『生まれてはみたけれど』を活動弁士とピアノの生演奏付きで観てまいりました。
デジタルではなく、東京からやって来たフィルムでの上映で、85年前にこの映画が公開されたときと(ほぼ)同じ体験をすることができたのでした。

ワタクシは知らなかったのですが、映画にナレーションを付ける「活動弁士」というのは日本独特のものだそうで。その理由として、歌舞伎や落語の影響がある、というのは大いに納得。最盛期には1万人(この数字、ちょっとうろ覚え)を超える弁士が活動していて、弁士組合の強固な反対でトーキーの導入がずいぶん遅れたそうな。日本では、今でも10数名の弁士の方が活動しているそうですよ。 

この日の弁士の方、春風亭昇太を彷彿とさせる風貌と声で。ナレーションが前面に出ることはなくて、あくまでも黒子に徹している感じでした。そして、アドリブだというピアノ演奏が非常に効果的でありました。

この映画、東京郊外に越してきた小学生の兄弟の目をとおして社会の悲哀のようなものが描かれています。ガキ大将を先頭に年齢の違う男の子たちがわーーっと一緒になって遊んでいるのだけど、新参者の兄弟は虐められるわけです。で、虐められたくないから学校をサボったりするのですが、策略を巡らしてガキ大将を追い落とし、自分たちがトップに君臨します。なのに、子分の父親が自分たちの父親の会社の上司で、いつも家では「勉強して偉くなれよ」と言っている父親が上司に媚びへつらう姿を見て憤慨した兄弟はハンストを決行して…。

この兄弟の動きが一泊遅れのユニゾンのようになっていて、何でもお兄ちゃんの真似をする弟のかわいいこと!

二人一緒になって父親に食ってかかるシーンで、学生の時分にこの映画を観たときには子供たち目線で「お父さん情けない!」なんて思っていたのですが、すっかり大人になった今観ると父親への同情の念が湧いてきます。 

子供の世界にも大人の世界にも、それぞれ序列やらなんやらあって、その中で何とかやっていくしかないのよね、というこの映画のメッセージ、なんだか今に通じるものがありますなぁ。

17 June 2017

Oldroyd in Islington | 素材が光るモダン・ヨーロピアン


ここロンドンで「小皿料理」と「シェアして食べるという概念」を広めた立役者と言えば、今や英国内に9店舗を展開するベネチア小皿料理の Polpo でしょう。
この Polpo 創立時から料理長を務めていたトム・オールドロイド氏が独立してオープンしたのが、こちらの小ぢんまりとしたレストラン。
ずっと気になっていたのですが、やっと先日ランチに訪れることができました!

ランチは 2 コース 16 ポンド、3 コース 19 ポンドとなかなかお値打ち。
メニューは仕入れによって毎日変わるそうな。
ワタクシたちが選んだのは…

上:燻製タラコのホイップ、ラディッシュ、セロリソルト
下:鴨のハム、くるみのピクルス、チェリー、丘クレソン

前菜のタラコが秀逸!タラマサラータのような感じ。何より、ラディッシュの瑞々しさが出色、でありました。
鴨のハムはツレアイのチョイスで、「味がない」とご不満の様子。ちょっともらって食べてみたのですが、やさしい鴨風味でチェリーの甘酸っぱさと好相性。ワタクシは好きでした。 

上:鯖、トマト、サンファイア、オレガノ
下:ほうれん草とリコッタ・チーズの団子、ソラマメ、セージ

メインの鯖は、鯖が思いっ切りぬるくて一瞬がっかりしたのですが、トマトやサンファイアと合わせているので「敢えて」かな、と。で、トマトがびっくりするくらい美味しかったです。
 ほうれん草とリコッタ・チーズの団子は、クリーミーで濃厚なお味。美味しいのだけど、ちょこっとで良いかな。

付け合わせに頼んだロースト・ポテトに入っていたロースト・フェンネルが良い仕事してましたね~。これは家でもやってみたい!

アマレッティ風味のアプリコットとアーモンドのタルト、ジャージー・クリーム

デザートはクロテッド・クリームのようなクリームが添えられたタルト。タルトケースがサクサクで、フィリングはシットリ。

コーヒーがちゃんと美味しかったのは好印象。

どの料理も素材がピッチピチで、特に脇役の野菜が美味しかったですね~。ただし、特にメインはかなり塩分キツメ。ワインと一緒に頂いたので無問題でしたが、飲まない人には厳しいかも。

夜は居酒屋的に使えそうなので、今度は夜行ってみたいな~。


OLDROYD
344 Upper St London, N1 0PD
Tel: 020 8617 9010
★★★☆☆

14 June 2017

A 5,000 km journey in Namibia 2 | ナミビア 5,000 キロのたび 2


さて、ナミビア2日目。
この日は4時起きでナミブ砂漠のナウクルフト国立公園へ。目指すは「死の沼地」デッドフレイです。
ナミブ砂漠と言えばアプリコット色の砂丘が有名ですが、それはこの辺りだけで、他の場所では普通の砂色(?)でした。この砂の色は酸化した鉄分によるものだそう。

ナウクルフト国立公園の入口にはゲートがあって、開門は日の出から日の入りまで。ゲートの近くの売店で入場料を支払います。

朝食中のオリックス。


ゲートからデッドフレイの手前 5km までの道は舗装されているのですが、そこから最寄りの駐車場までは砂地になっていて 4WD 車以外は侵入禁止になっております。通行禁止エリア手前の駐車場からシャトル・ジープが運行しているのだけど、ワタクシたちのレンタカーは 4WD、そのまま進んで行きました。ら、この砂地が半端ない砂の海で見事にスタック。通りかかったシャトル・ジープのドライバーさんに助けていただきました。巧みなハンドルさばきの彼の指示に従って、うんうん言いながら車を押しましたとも。砂漠、舐めたらあかんですな…。ちなみに、このドライバーさんに教わった砂地運転のコツは「他の車の轍をたどりつつ、できるだけ高速で走り抜ける」です。


そんなこんなで、なんとか最寄りの駐車場に到着。ここからデッドフレイまでは砂地を 1km ほど歩きます。ビーサンを履いていたワタクシ、めっちゃ歩きにくかったので裸足で歩いたのですが、さらさらの砂が冷たくて気持ちよかった~(帰りは登り切った太陽に砂が焼かれてめっちゃ熱くなっておりました)。

この辺りはソーサスフレイ(川の終着点という意味)と呼ばれるエリアで、大昔には湖があったのが今ではご覧のとおり。白っぽい部分は塩と粘土だそう。

デッドフレイの前に佇むツレアイ。

15 分ほど歩いたでしょうか、目の前にデッドフレイが!


まるで、ダリの絵に迷い込んだかのようなシュールな光景。


気候変動で干上がった、かつての沼地に立つ枯れ木たち。あまりに空気が乾燥しているため、腐らずその姿を留めているのだそう。その樹齢、推定 900 年。


かつて水の底だったんだなぁ、というひび割れた地面。

この世にも奇妙な光景を眺めながら、昨日の宿で用意してもらった朝食のお弁当を食べたのでした。

美しい風紋。

デッドフレイを十分堪能した後、元来た道をてくてく歩いて駐車場へ。緊張の砂地ドライブも何とか無事こなして(助手席のワタクシ、ガッツポーズ)、本日の宿に移動します。


この日の宿は、ナウクルフト国立公園から車で10分ほどのロッジ。中は涼しくてとっても快適なキャビンは自炊もできるようになっておりました(ワタクシたちは併設のレストランで食事しましたが)。
朝夕は涼しいのですが昼間は陽射しが痛いくらい暑くなるので、このままシエスタに突入です。

12 June 2017

A 5,000 km journey in Namibia 1 | ナミビア 5,000 キロのたび 1


幼い頃テレビで『野生の王国』を観て以来、いつかアフリカで野生動物を見てみたい、と思っておりました。が、不惑を過ぎてめっきり体力の衰えを感じる今日この頃。「今行かなきゃ、"いつか"は永遠に来ないんじゃあ?」という心の声に押されて、ツレアイと2人、5月の後半に2週間ほどかけてナミビアを旅してきました。ナミビアでかい!総走行距離 5,000 キロ、砂漠の中をひた走りに走って参りましたよ~。

ナミビアを選んだ理由は、「野生動物の宝庫である」ということ以外に
① アフリカ大陸でもっとも治安の良い国の1つである。
② 自分たちで車を運転してサファリを楽しむことができる(団体行動が苦手なワタクシたちにうってつけ)。
③ 野生動物以外に、雄大な景色や歴史的な建造物などの見どころがある。
などなど。

というわけで、初日、南アフリカのヨハネスブルグ経由でナミビアの首都ウィントフックまで飛んだワタクシたち。首都はあまり治安がよろしくない、ということで、そのままレンタカーでナミブ砂漠のソリティアまで3時間の移動、という強行軍を敢行したのでした(実際には5時間かかった…)。15時間のフライトの後の長距離移動に不安を感じていましたが、時差がほとんどないのと、夜発朝着だったのと、(恐らく)アドレナリンが目いっぱい出ていたのとで全然大丈夫でした!

空港からウィントフック市街へ、そしてウィントフックで散々迷った後に「この道でいいんだよね?!」という道路に出た途端、掘っ立て小屋の前に立つ警察官に遭遇。どうやら検問所のようです。ワタクシたちの前の車には「行け」という合図を出していたのに、こちらには何の合図もなくじーっと見ているだけだったので、じりじり進みながら「このまま行っていいですか?」と聞いたらば、お巡りさん、何やらプリプリしながら「What's your problem?」と。質問の意味が良くわからず、怒ってるように見えるけど親切で聞いてくれてるのかな、なんて思って「ソリティアに行きたいのですが、この道で良いですか?」と聞いたらば、「お前たちがどこに行くとかどうでもいいんだよ。一体どういうつもりなんだ?」とエライご立腹の様子。

よくよく話を聞いてみると、お巡りさん、ワタクシたちに「停止」の合図を出したらしいのですね(まったくわからなかったけど)。で、その場合、エンジンを切らないといけないのだけど、そのまま進み続けたもんだから、「逃走するつもりか?!」と。そのままツレアイが掘っ立て小屋に連れて行かれて、ナミビアの交通ハンドブックを見せられつつ、こってり絞られ…。車で待っていたワタクシは「いちゃもんつけて賄賂を請求するつもりでは?」と気が気ではなかったのですが、ツレアイがうまいこと下手に出つつも、こちらに悪意はまったくなかった、知らなかっただけなんだ、と辛抱強く説明してくれたお蔭で無事解放されました。やれやれ、と出発した途端ツレアイが「あの警官、酒臭かった」と。おーーーーい…。

気を取り直して、さらに進むと、道路が未舗装の砂利道になり、風景がだんだんと砂漠っぽくなってきて、

のんびりお散歩中のダチョウ。

第一野生動物に遭遇!

この後、でこぼこ道やつづら折りの山道(未舗装、安全柵なし!)などナミビアの洗礼をたっぷり受けつつ、なんとか日暮れ前にこの日の宿に到着したのでした。

夕日に輝く草原。

部屋の前にはこんな景色が広がっておりました~。
日が暮れると、街灯がないので真っ暗に。お椀を伏せたような夜空に数えきれないほどの星がみっちりと瞬いておりました。あまりの星の数に、ずーっと見ていると船酔いのような感じで頭がグラグラするほど。
この日は、晩御飯の後、朝まで泥のように眠ったのでした。

こんな感じで始まったナミビアの旅。これから、ぼちぼちと綴っていこうと思います!